私もいずれ入居することになるかも知れない老人ホームに知人のFさんが入ったので、様子をうかがいに行ってきました。身体は思ったより元気で心臓も肺も腰も目もあまりいいとはいえないけれど、食堂に出向いたり集会室で大型のテレビを見ながらみんなとしゃべることがとても楽しいと言っていました。Fさんは話題は豊富でユーモアもあり、他人の悪口は言わないので「fさん」と呼ばれ話し相手としてみんなに親しくしてもらっているようです。
この養護老人ホーム「愛宕ゆうこうの郷」は、水尾からさらに4キロほど行った自然豊かな場所にあります。個室の窓を開けるとすぐそこまで林が来ていて、兎や狸、時には鹿も姿を見せてなぐさめてくれます。ここは愛宕山の北西の麓になり裏の林から緩やかな山が連なって高く上がっています。
下のイラストは中庭の様子で、左手前に事務棟と共用室、左奥、右手前と奥にそれぞれ居住の個室があります。町中の施設と比べて広い敷地の中で建物がゆったりと配置されていました。
部屋でしばらく話をしましたが、机と収納箱と折りたたんだ布団が見え、箱の上にはご両親の写真を置いていました。目のために部屋にテレビは置いてなくて、知性派のFさんが今では本も読む気になれないのが気の毒でした。介護は何かにつけて心配りされ、いつも笑顔で声をかけてくれるし、風呂にもたびたび入れて洗ってもらえます。三食とも行き届いた食事が用意され何の心配も要らないのですが、時には気分転換のため施設内の食堂で好みの丼などを注文して食べるのも楽しみのようです。
酒もタバコも自由ですが、Fさんはどちらも全くやりません。酒はひとり1日2合までしかだめなので、それで足りない人がFさんに頼んで買ってもらおうとするけど、担当の人にはそれが分かって売ってくれないと言っていました。ここの入居費は年金でまかない、月にいくらかの小遣いももらえ、それでも酒もタバコもやらないとほとんど使うことがないそうです。これだけの施設に経済的な負担もほとんどなくて入ることができる日本の福祉行政はなかなかのものだと感じました。
私が気の毒に感じたのは何より目が不自由なことで、もし私がこのような場所に入居することになったらテレビは要らないけど、ブロードバンド接続のパソコンと、携帯電話と(聖書は旧約も新約も全部この小さい中に入っています)、哲学関係の本を手許に置き、さらに許されたら三味線を持ちこんでつま弾いてみたい(一応隣との壁は防音になっているようです)と思いました。そんな気力があるうちは入れて貰えないかな?
Fさんは根っからのタイガースファンです。訪問する直前に、私の甥が始球式で投げるからと招待券を送ってくれ、数十年ぶりに家内と甲子園に出かけ、その時は5−0で阪神が勝ったという話をしたら嬉しそうに聞いてくれて、ささやかな土産にと鳥谷のマスコットを渡すと、とても喜んでくれて部屋のドアの外に掛けて、表向きにしたら在室、裏向きにしたら部屋にいないと表示するんだと言っていました。
私は車で清滝のトンネルの手前、愛宕念仏寺の前から府道50号線に入り、水尾を通って行きました。自宅から1時間弱でした。けわしい道だと聞いていましたがさすが日本の道路、こんな山の中の道でも舗装されています。2車線はないのでスピードを落とし、カーブミラーで注意しながら向こうから車が来そうだと早めにすれ違いできそうな場所で待っています。坂をかなり上って気がついたら左はるか下に保津川下りの舟が見えてかすかに歓声も聞こえていました。危険なところはガードレールがあったのでまさか落ちることはないとは思いましたが、道を外れたら高い崖を真っ逆さまと多少スリリングな気持ちを楽しみながら走りました。
水尾にはぜひ行きたい場所があるので、今度は車ではなく保津峡駅から1時間かけて車に注意しながら歩こうかなと思っています。