初めてのヨーロッパ旅行

1.トゥールーズの想い出a

 アシジを終えてルルドに行くために、ローマのホテルを出てダ・ヴィンチ空港からトゥールーズ空港に向かいました。空港から市内のホテルに向かうバスの車内で、トゥールーズについて、日本からの添乗員がいろいろ説明してくれました。

 その中で私の心に残ったのは、運河でした。全く初めて見るフランスの運河ですがなんとなく気になったのです。私はフランス文学にはあまり馴染みがなくて、読んだものはブルーストの「失われた時を求めて」とエクトル・マロの「家なき子」くらいのものです。

 今回の旅行の前にもう一度ブルーストを読んで見ようかなと思いましたが、まあこの大作は1年はかかりそう、気に入った鈴木道彦氏の訳で全巻そろえると、6万円くらいかかるかなという感じです。それで、家なき子を書店で探してみました。これは完訳の文庫版で3冊になっていましたから読めそうでしたが、結局やめました。

 トゥールーズで運河を見て、私は家なき子を思い出したのです。場所はどこか覚えていませんが、ヴァリタス親方が警察に捕らわれて食べるものがなくお腹をすかせて3匹の犬と1匹の猿を連れて途方にくれたレミが、上品で優しいミリガン夫人に出合ったのが運河でした。ソルボンヌ大学に留学したというフランス文学専攻の添乗員さんに尋ねて見ましたが、さすがに児童文学は知りませんでした。

 京都に帰って、早速書店で立ち読みしましたら、なんと、その場所はトゥールーズの運河でした。正確にはトゥールーズで捕らわれた親方から離れて、警官がこわくて何時間か歩いたところですから、トゥールーズから地中海まで2百数十キロあるミディ運河の少し下ったところでトゥールーズの市内か少し離れたところかも知れません。

 その書店で早速完訳の3冊を購入しました。そして、全巻を一気に読み上げました。子どものころと違って、年をとって涙もろくなっていたのでしょう、何か所も涙が止まらないところがありました。