スワンの恋人オデットのイメージ

 失われた時を求めて 第1篇 『スワンの恋』にオデットのイメージは、シスチナ礼拝堂にあるボッティチェリの壁画『モーゼの生涯』のエテロの娘ツィポラに似ていているとあります。
 プルーストは次のように描いています。「彼のそばに立って、ほどいた髪を頬に沿って垂らし、無理な姿勢ではなく版画の方に身をかがめられるようにと軽く踊るように片足を曲げ、頭をかしげながら、心が燃えたたないときにはひどく疲れて陰気に見えるその大きな目で、じっと版画を見つめている彼女の姿が、あまりにもシスティナ礼拝堂の壁画にあるエテロの娘チッポラに似ているので、スワンははっとした」(鈴木道彦訳)

 このツィポラの絵を見たいと思いました。2006年5月にシスティナ礼拝堂に入りましたが、そのときはほとんどミケランジェロの天井画と最後の審判の壁画に圧倒されて、横のボッティチェリの絵は目に入ったかも知れませんが、残念ながら印象に残っていません。

 右上の写真は、2009年5月、NHKで放映された『バチカン美術館の至宝』を見ていて、これではないかと直感的に感じたものです(画面をデジカメで撮りました)。右がモーゼで左の2人が羊の群れに飲ませるために井戸に水を汲みに来た祭司の娘たちです(旧約聖書『出エジプト記』では7人の娘がいて、彼女たちがそこに来たとあります)。羊飼いの男たちが来て、娘たちを追い払ったとき、モーゼが娘たちを救い、それが縁で娘の一人ツィポラがモーゼの妻となりました。私は左側の顔を見せている娘がツィポラではないかと推測するのです。
 出来れば日本で出版されているシスチナ礼拝堂の壁画の写真集を手に入れて、このことを確かめたいと思っています。