今年の4月から、鈴木道彦訳 集英社刊の全13巻を、読み始めたのは4月11日、読み終えたのが今日8月11日ですから、ちょうど4か月かかったことになります。半年はかかるだろうと思っていましたが、中ごろからとても面白くなって、時間を惜しむように読み進めました。「私の本の読者は私の読者ではなく、自分自身のことを読む読者である」という言葉が、この本を読み終えた私に、実感を与えてくれました。
挿し絵は、特に人物はリアルとはいいがたいものですが、キース・ヴァン・ドンゲンの絵はとても味があって、一番気に入ったのは12巻で、私がアルベルチーヌを繋ぎとめるためにヨットを買い求めようと考えたところの挿絵で、右上のものです。
30年ほど読みはじめたきっかけは、「巨人の星」でしたが、それは12巻「見出された時T」にありました。
「身体によいのは幸福だけだからだ。それに対して精神の力を強化するのは悲しみのみである」という言葉です。私が憶えていたのは「幸福は身体の健康にはよろしい、しかし精神を強くするのは心の悲しみである」でした。
今回この個所を再び読んで、単に私の心に強く響いたこの言葉の前に、もっと深いものがあることが分かりました。
「ときには苦悩に満ちた断章がまだ下書きのまま完成しないときに、新たな愛情や新たな苦しみがやってきて、その断章を仕上げさせ、それを豊かなものにさせてくれることがある。こうした役に立つ大きな悲しみがまだあらわれなくても、不満を言うことはない。それはかならずやってくるし、そう長く待たせはしないからだ。それでも悲しみがやってきたら急いで活用しなければならない。なぜなら、それはそう長続きしないからだ。人の心はじきに慰められるものだし、さもなければ、悲しみがあまりに激しくて、心がそれほど強靭でないと、人は死んでしまうのである。というのも、身体によいのは幸福だけだからだ。それに対して精神の力を強化するのは悲しみのみである」。
残された時間はあまりありませんが、もう一度、読み返したいという気持ちが残っています。全体を読んで、もう少し深い思索を行いたいところですが、それはおいおいまとめることにして、まずは完読のけじめです。